兵庫県丹波篠山市、美学街道エリア「福住」に拠点を構える栗田絋一郎氏。約150年前の技法で写真を撮影するアーティストで、約30年ロックフェラー財団の基金を受けてアメリカ大陸の自然の風景を撮影してきた。
故郷である神戸に戻り、自身最後のプロジェクトとして選んだ場所が「福住」だった。ここには新しいものと古いものが共存し、都市からも程よい距離。栗田氏が思うアート活動に重要な立地条件を満たしていた。
栗田氏は写真を「光のアート」と呼ぶ。クラシックな撮影技法だからこそ、陰影や光の差し方によって同じ作品は二度と生まれない。
オルタナディブプロセス、と氏が呼ぶ写真の技法を伝えるため、ワークショップも定期的に開催している。子どもでも楽しめる体験でありながら、栗田氏は写真のこと、撮影のことを哲学的に捉えているため、大人も感動して体験する様子が印象的だ。
山奥に一人こもってアート活動に没頭するのは、そのアーティストにとってはアートかもしれないけれど、アートではない。人の目に触れ、評価されること自体に「アートは生まれる」とお話してくれた。古いものの中にも新しい価値を見出し、次代へと繋いでいく栗田氏の美学がそこにあった。